韓国の退職金はどう決まるか:平均賃金、DB・DC型退職年金、中間精算、14日の支払期限

韓国の勤労者退職給与保障法と勤労基準法の条文をもとに、退職金の受給条件、平均賃金と通常賃金の違い、DB型・DC型退職年金で結果がどう変わるか、中間精算の事由と支払期限を解説します。

everytooleverywhereallatonce · 公開

韓国の退職金(퇴직금)は、会社が任意で用意する福利厚生ではなく、法律が定めた最低ラインです。勤労者退職給与保障法第4条は、使用者に退職給付の制度を少なくとも一つ設けるよう義務づけ、第11条は何も設けていない会社を「退職金制度を設けたもの」とみなします。「うちには退職金がない」という説明は、韓国の法律上は通りません。適用外は、同居の親族だけを使う事業と家庭内の雇用(家事使用人)だけです(第3条)。

この記事は韓国の制度についての解説です。条文は韓国政府の国家法令情報センターの韓国語原文を参照しており、日本語の用語は説明のための訳語です。どの要件にも国籍の条件はないため、韓国で働く外国人も同じ扱いになります。

法律が認める四つの制度

法第2条は退職給付制度を四つに分けています。

制度 事前に決まっているもの 労働者が受け取る額
退職金制度(第8条) 勤続1年につき30日分以上の平均賃金 退職時の平均賃金 × 30 × 勤続年数
確定給付型退職年金 DB(第13〜18条) 給付の水準 退職金制度と同水準以上(第15条)
確定拠出型退職年金 DC(第19〜22条) 会社の掛金 毎年、年間賃金総額の1/12以上+運用結果
中小企業退職年金基金(第23条の2以下) 会社の掛金 常時100人未満の事業が対象、勤労福祉公団が運営

退職金制度とDB型は、計算方法が実質的に同じです。違うのはお金の置き場所で、退職金制度には社外に積み立てる義務がないため、会社の経営が傾くと受け取りにくくなる可能性があります。DB型は一定割合以上を金融機関(退職年金事業者)に積み立てる必要があります(第16条)。DC型は計算の考え方そのものが異なります。

制度を新設したり別の種類に切り替えたりするには、労働者の過半数で組織する労働組合、なければ労働者の過半数の同意が必要です(第4条第3項)。同じ事業の中で社員ごとに算定方法に差を付けることも禁じられています(第4条第2項)。

誰が受け取れるか

第4条第1項ただし書きは二つのグループを除外します。継続勤務期間が1年未満の労働者と、4週平均で1週の所定労働時間が15時間未満の労働者です。

よくある誤解は次の三つです。

  • 「契約社員だから退職金はない」:雇用形態は問われません。継続勤務が1年以上なら対象です。
  • 「繁忙期に週20時間働いたから対象」:基準は契約で定めた所定労働時間です。残業で増えた時間はこの判断とは別です。
  • 「アルバイトは関係ない」:週15時間以上の所定労働で1年を超えて働けば対象です。

1年は日数で数えます。入社日から退職日まで365日に1日でも足りなければ法定の義務は生じません。境目にいるなら、会社が退職日をどの日付で処理するかを先に確認してください。

平均賃金と通常賃金

退職金の基準は平均賃金です。勤労基準法第2条第1項第6号は、算定事由が発生した日以前3か月間に支払われた賃金総額を、その期間の総日数で割った額と定義します。実際に受け取った額を後から平均したものです。雇用労働部は全体の式を「1日平均賃金 × 30日 × 継続勤務日数 ÷ 365」と示しています。

通常賃金は事前の概念です。勤労基準法施行令第6条は、定期的・一律に所定労働または総労働に対して支払うと定めた時間給・日給・月給などの額と定義します。時間外手当のように単価が事前に必要な計算で使います。

普通は平均賃金のほうが大きくなります。時間外・夜間手当や賞与の一部が入るからです。ところが退職前3か月に欠勤や無給期間があると、平均賃金が通常賃金を下回ることがあります。そのときは勤労基準法第2条第2項により通常賃金を平均賃金とします。退職金がふだんの給与水準を下回らないための下限です。

3か月平均に入るもの、除かれるもの

3か月に実際に支払われた基本給・手当はそのまま入り、1年周期の支給は按分します。雇用労働部は、退職前1年間の賞与総額の3/12と、年次有給休暇の未使用手当の3/12を加えて計算します。雇用労働部の計算機には「賞与加算額 1,000,000ウォン=4,000,000ウォン×3/12」「年休手当加算額 75,000ウォン=(60,000ウォン×5日)×3/12」という例が載っています。

年休手当には範囲の制限があります。行政解釈(賃金労働時間課-2861、2021年12月15日)は、退職前年に発生した年休のうち使わずに働いた日の手当だけを含め、退職年に発生した年休を使えずに辞めることで初めて生じる手当は含めません。退職の時点ではまだ支払事由が生じていないお金だからです。

除かれるものもあります。勤労基準法施行令第2条は、試用開始から3か月以内の期間、使用者の責任による休業、産前産後休暇、業務上災害の療養、育児休職、争議行為、兵役義務の履行、使用者の承認を得た業務外の傷病休業について、期間と賃金の両方を算定から外します。同条第2項は、臨時に支払われた賃金・手当と通貨以外で支払われた賃金も賃金総額から除きます。

DBとDC:同じ経歴、違う結果

2021年9月1日に入社し、2026年9月1日に退職した人を考えます。年収は5年間で3,600万→4,000万→4,400万→4,800万→5,200万ウォンと毎年上がり、賞与はないものとします。

  • 退職金制度・DB型:最後の3か月の賃金1,300万ウォン、算定期間92日、在職1,826日。1,300万×30×1,826÷(92×365)≒21,207,266ウォン。最終年収が過去5年すべてに掛かります。
  • DC型:会社が毎年ちょうど年収の1/12を払うなら、(3,600+4,000+4,400+4,800+5,200)万÷12≒18,333,333ウォンが元本。これに運用損益が付きます。

元本ベースで約287万ウォンの差があり、DCがこれを5年で埋めるにはかなり高い利回りが必要です。賃金の伸びが大きい人にはDB型の計算が有利に働き、賃金が横ばいか下がる局面(賃金ピーク制など)ではDC型が相対的に有利になりやすいのはこの構造のためです。一方でDC型は毎年労働者本人の口座に入金されるので、その後の会社の状況に左右されにくいという利点があります。

DC型の加入者には、上で説明した平均賃金のルールはまったく関係しません。最後の3か月に賞与が集中しても、2月が期間に入っても、口座の残高は変わりません。

中間精算は法定の事由があるときだけ

退職金制度で退職前に退職金を先払いしてもらう中間精算は、法第8条第2項と施行令第3条の事由に当たり、労働者が求めた場合に限られます。

  1. 持ち家のない労働者が本人名義で住宅を購入する
  2. 持ち家のない労働者が居住目的でチョンセ(전세)金・賃貸保証金を負担する(一つの事業で1回)
  3. 本人・配偶者・扶養家族が6か月以上の療養を要する傷病で、年間賃金総額の12.5%を超える医療費を負担する
  4. 申請日から遡って5年以内に破産宣告を受けた
  5. 申請日から遡って5年以内に個人再生手続の開始決定を受けた
  6. 定年の延長・保障を条件に賃金を減らす制度(賃金ピーク制)を実施する
  7. 合意で所定労働時間を1日1時間または1週5時間以上短縮し、3か月以上継続して働く
  8. 2018年の勤労基準法改正による労働時間短縮で退職金が減る
  9. 雇用労働部長官が告示する災害の被害を受けた

6〜8は、平均賃金がこれから下がる場面です。下がった賃金で全勤続期間を計算されると損をするので、その前に区切って精算できるようにしています。中間精算の後は、退職金の継続勤務期間を精算時点から新たに数えます。使用者は労働者の退職後5年間、証明書類を保存しなければなりません。

DC型には中間精算の代わりに積立金の中途引き出し(第22条)があり、事由は別に定められています。

14日の支払期限とIRP

退職金は退職日から14日以内に支払わなければなりません(第9条第1項)。特別な事情があれば当事者の合意で延長できますが、会社の一方的な通知では延ばせません。勤労基準法第37条は、退職給付の一時金を14日以内に払わない場合に翌日から遅延利息を付けるよう定め、施行令第17条はその利率を**年20%**としています。

支払方法は原則として、労働者名義の個人型退職年金(IRP)口座への移転です(第9条第2項)。口座を指定しなければ本人名義のIRPに移されます。施行令第3条の2が定める例外は次のとおりです。

  • 55歳以後の退職
  • 給付が雇用労働部長官の告示する金額以下
  • 労働者の死亡
  • 就労可能な在留資格で働いた外国人が退職後に出国する場合
  • 他の法令により給付の一部を控除する場合(残額はIRPへ移転)

退職金の請求権は3年間行使しなければ時効で消滅します(第10条)。会社が倒産しても、質権・抵当権で担保された債権を除き、租税・公課や他の債権より優先して弁済されます(第12条)。

退職所得税が低い理由

退職金は何年分もの積み重ねを一度に受け取るものなので、その年の給与と同じように課税すると累進税率が過大にかかります。韓国の所得税法は二段階でこれを和らげます(第48条・第55条第2項)。

  1. まず勤続年数控除を差し引きます(5年以下は年100万ウォン、以後は区分ごとに増額)。1年未満の端数は1年とみなします。
  2. 残りを勤続年数で割って12を掛け、「年収」に換算してから換算給与控除を引き、基本税率を適用します。出た税額を12で割り、勤続年数を掛け直します。

たとえば勤続10年で退職金5,000万ウォンなら、勤続年数控除1,500万、換算給与(5,000万−1,500万)×12÷10=4,200万、換算給与控除800万+(4,200万−800万)×60%=2,840万、課税標準1,360万ウォン。6%で81万6千ウォン、これに10/12を掛けて所得税68万ウォンです。地方所得税10%を加えても退職金の約1.5%にとどまります。IRPに移した退職金は移転時には課税されず、引き出すときに課税されます。

自分の数字で確かめるには

退職金制度かDB型であれば、入社日・退職日、最後の3か月の賃金、1年分の賞与、前年発生の未使用年休手当があればおおよその額が出ます。退職金計算ツールでは1日平均賃金、税引前退職金、退職所得税の見積もりをまとめて確認できます。算定期間の3か月に育児休職や業務上災害の療養など除外すべき期間が含まれている場合は、計算結果よりも雇用労働部の相談窓口(韓国内で1350)や公認労務士への確認を優先してください。

出典