マクスウェルの悪魔ベータ
扉ひとつを開け閉めして気体を熱い側と冷たい側に分ける
このツールはまだ安定化中のベータ版です。結果に違和感があればお知らせください。
速い分子は右へ、遅い分子は左へ。右の温度が左の1.5倍になれば成功。
扉が閉じている
- 残り時間
- –
- 目標
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- 現在
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- 左の温度
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- 右の温度
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- 左の分子数
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- 右の分子数
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- 扉を通った分子
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- 記録した情報
- –
–
キャンバスを押している間(またはスペースキー)扉が開きます。
真ん中の仕切りには扉が一つあります。分子どうし、そして壁とは完全弾性衝突なので全エネルギーは変わりません。それでも速い分子だけを右へ通せば右は熱く、左は冷たくなります — エネルギーを使わずに温度差を作ったことになります。自分で扉を操作し、完璧な悪魔・目を閉じた悪魔とも比べてみましょう。記録した情報(ビット)は、完璧な悪魔なら調べた分子の数、自分で操作した場合は扉の開閉回数(目で見た分までは数えられないので下限として ≥ を付けます)、目を閉じた悪魔ならコインを投げた回数です。帳簿の棒グラフは気体が得た秩序とその情報を消す費用を並べて示します。
処理中…
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停止していません。計算が終わると結果が表示されます。
マクスウェルの悪魔について
箱の中央の仕切りに扉が1つあり、両側に300Kの気体が半分ずつ入っている。分子どうし・壁との衝突は完全弾性で全エネルギーは変わらず、扉の開け閉めにもエネルギーは要らない。それでも速い分子だけを右へ通せば右は熱く、左は冷たくなる。マクスウェルが1867年の手紙で持ち出したこの思考実験は、熱力学第二法則を正面から破るように見える。
ツールでは3種類の悪魔を比べられる。自分で扉を操作する場合、近づく分子をすべて見て判断する完璧な悪魔、何も見ずに0.12秒ごとにコインを投げて開閉する目を閉じた悪魔だ。90秒以内に右の温度を左の1.5倍にする(温度を分ける)か、分子の75%を右に集める(片側に集める)と成功になる。
完璧な悪魔は何を見ているか
完璧な悪魔は、この先0.08秒以内に扉に届く分子をすべて調べる。温度モードの基準は最初の温度での平均速度、約125px/s。左から来る分子はこれより速ければ通し、右から来る分子はこれより遅ければ通す。条件に反する分子が1つでも向かってくれば扉を閉める。圧力モードでは左からは全部通し、右からは全部止める。
2次元のマクスウェル・ボルツマン分布で平均より速い分子の割合はexp(−π/4) ≈ 45.6%なので、左から扉に来る分子の半分近くは通過資格がある。目を閉じた悪魔は速さを見ないので、速い分子と遅い分子が同じ割合で行き来し、温度差はできない。開閉回数が同程度でも結果はまったく違う。違いは情報だけだ。
シラードの1分子エンジン
1929年、レオ・シラードは問題を分子1個にまで削った。箱の中央に仕切りを入れ、分子が左右どちらにあるか(1ビット)を知り、その側をピストンにして等温膨張させると、周囲の熱からkT·ln2の仕事を取り出せる。1ビットの情報がkT·ln2の仕事に変わるわけだ。シラードは、これを帳消しにするには測定そのものに少なくともそれだけのエントロピーのコストがかかるはずだと考えた。
コストは測定ではなく消去にある:ランダウアーとベネット
1961年、ロルフ・ランダウアーは、ビットを0にリセットするような論理的に不可逆な操作には1ビットあたり最低kT·ln2の発熱が伴うことを示した。300KではkT·ln2 ≈ 2.9×10⁻²¹J、約0.018eV。
1982年、チャールズ・ベネットはこれで悪魔の問題を整理した。測定は原理的に可逆に行える。しかし記憶容量が有限な悪魔は働き続けるために古い記録を消さねばならず、その消去がランダウアーのコストを払う。2012年にはBérutらが二重井戸中のコロイド粒子1個で1ビットを消去し、ゆっくり消すほど放出熱がkT·ln2に近づくことを測定した。
帳簿のバーが計算しているもの
ツールは気体を2次元理想気体とみなし、エントロピーをS/k = Σ N·[ln((A − N·πr²)/N) + ln kT]で計算する。A − N·πr²は部屋の面積から分子(半径r = 4px)自身が占める面積を引いた使える面積。2次元では比熱が1分子あたりkなのでln Tの係数は1。最初(左右半分ずつ、同温)との差が「気体が得た秩序」である。悪魔の側の消去コストはビット数×ln2。完璧な悪魔は、扉の前の視野(0.08秒以内に扉の隙間に届く分子)に新しい分子が入るたびに「通すかどうか」を1ビット記録する。自分で操作するときは目で見た分を数えられないので、扉の状態を変えた回数を下限として使い「≥」を付ける。目を閉じた悪魔はコインを投げるたびに1ビット。
このビット計算も教育用の近似だ。640×420pxの画面で完璧な悪魔が温度分けを終えるまでに調べる分子は約250〜290個で、扉の開閉回数(130〜160回)の2倍近い。扉を開けずに追い返した分子も測っているからだ。それでも1分子1ビットは「速いか遅いか」だけを書いた最小量で、本物の悪魔なら位置と速度をもっと精密に測る必要がある。目を閉じた悪魔のコイン結果は気体についての情報ではないが、やはり消さねばならない記録なのでコストに数える。そのため何も得ずにコストだけが積み上がる。
例
温度を分けたときの秩序
- 入力
600分子、左右300個ずつ、右360K・左240K(比1.5)- 結果
ΔS ≈ 300·ln1.2 + 300·ln0.8 = 300·ln0.96 ≈ −12.2k
エネルギー保存により2つの温度の平均は300Kのまま。この秩序に必要な情報は12.2 ÷ 0.693 ≈ 18ビット。完璧な悪魔はこの秩序を作るまでに250個以上の分子を調べるので、帳簿は十分プラスになる。
片側に集めたときの秩序
- 入力
600個中450個が右、温度はほぼ同じと仮定- 結果
ΔS ≈ 150·ln2 + 450·ln(2/3) ≈ 104.0 − 182.5 = −78.5k
分子を片側に集めるほうが温度を分けるよりずっと大きな秩序で、約113ビットで釣り合う。実際には速い分子ほど扉によく届くため右がやや温まり、値は少しずれる。
使い方
- 目標(温度または片側に集める)と扉を操作する者を選ぶ。
- 開始を押す。手動モードではキャンバスかスペースキーを押している間だけ扉が開く。
- 左右の温度・分子数、記録したビット、帳簿バーを見る。
- 同じ目標で3種類の悪魔を順に動かし、結果を比べる。
よくある質問
マクスウェルの悪魔は結局不可能なのか?
情報を得て使う装置としては可能で、単一粒子や電子を使った「情報エンジン」の実験も行われている。不可能なのは、記憶の消去コストまで含めて第二法則を破ることだ。
なぜ測定ではなく消去にコストがかかるのか?
測定は状態をコピーする操作で原理的に元に戻せる。消去は複数の可能な記録を1つの状態にまとめる操作で戻せず、その代償として1ビットあたり最低kT·ln2の熱を捨てる必要がある。
目を閉じた悪魔でも目標に近づくことがある
片側数百個程度では温度や分子数が数%ずつ自然に揺らぐ。ただし系統的な偏りではなく、時間がたてば平均に戻る。
kT·ln2は実際どれくらい小さい?
300Kで約2.9×10⁻²¹J。現在のコンピュータが1ビット処理に使うエネルギーはこれより何桁も大きく、この限界はまだ実用設計を直接縛ってはいない。
補足
エントロピーの式は理想気体の式に、分子自身の面積を差し引く排除面積の補正(使える面積 = 部屋の面積 − N·πr²)を加えたもの。分子を円板として扱う一次の補正なので、ぎっしり詰まる(片側に1,000個以上寄る)と実際の円板気体のエントロピーとはまだずれる。
ビット数は、完璧な悪魔では調べた分子の数(1分子1ビット)、自分で操作する場合は扉の状態が変わった回数(下限、≥ 表示)。どちらも実際の悪魔が扱う情報量の下限に近い。
出典
- L. Szilard, Über die Entropieverminderung in einem thermodynamischen System bei Eingriffen intelligenter Wesen, Z. Phys. 53, 840 (1929)
- R. Landauer, Irreversibility and heat generation in the computing process, IBM J. Res. Dev. 5, 183 (1961)
- C. H. Bennett, The thermodynamics of computation — a review, Int. J. Theor. Phys. 21, 905 (1982)
- A. Bérut et al., Experimental verification of Landauer's principle linking information and thermodynamics, Nature 483, 187 (2012)
基準日: