気体分子運動シミュレーターベータ

数千の分子の弾性衝突からマクスウェル・ボルツマン分布が生まれる様子を実験

このツールはまだ安定化中のベータ版です。結果に違和感があればお知らせください。

シミュレーションエンジン(WebAssembly)を読み込み中…

速さの分布シミュレーションマクスウェル・ボルツマン理論

温度を変えると、全分子の速度がその場で同じ割合に調整されます(徐々に加熱されるわけではありません)。

測定温度
–
最確速度
–
平均速度
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二乗平均平方根速度
–
PA / NkT
–
衝突/秒
–

各点は気体分子1つです。分子どうし、そして壁と完全弾性衝突するので全エネルギーは保存されます。最初は全分子が同じ速さで出発しますが、衝突を重ねるうちにヒストグラムがマクスウェル・ボルツマン曲線に重なっていきます。温度を上げると全ての速度が同じ割合で大きくなり、分布が広がります。点線は最確・平均・二乗平均平方根速度です。キャンバスを押すと最も近い分子の軌跡(ブラウン運動のようなランダムウォーク)を追跡します。PA/NkT が1に近ければ理想気体の法則が成り立っており、分子が大きく多いほど1より大きくなります。

気体分子運動シミュレーターについて

画面の点はすべて同じ質量の剛体円板で、円板どうし・壁との完全弾性衝突以外の力は働かない。リセット直後は全分子が同じ速さ√(2kT)で向きだけランダムに飛び出すので、最初のヒストグラムは1本の棒になる。衝突を重ねるうちに棒が崩れ、右のマクスウェル・ボルツマン曲線に重なっていく。全エネルギーは一定のままで、変わるのはその配分だけだ。

このシミュレーションは2次元なので、教科書の3次元の式とは係数が違う。以下の数値はすべて2次元の値。温度はK表示だが、内部では300KをkT = 10,000 px²/s²に対応させた任意単位である。

2次元の速さ分布と3つの代表速度

速度のx・y成分がそれぞれ分散kT/mの正規分布に従うと、速さの分布はf(v) = (mv/kT)·exp(−mv²/2kT)となる。3次元では前にv²がつくが、2次元ではvだけ。ここから最確速度√(kT/m)、平均速度√(πkT/2m)、二乗平均平方根速度√(2kT/m)が出る。グラフの3本の点線が左からこの順に並ぶ。

300Kではそれぞれ100、125.3、141.4 px/s。比1 : 1.253 : 1.414は温度によらない。温度を変えても曲線の形は同じで、横軸が√T倍に伸びるだけだからだ。出発時の速さ√(2kT)は二乗平均平方根速度にちょうど等しく、初期状態と平衡状態の平均運動エネルギーは同じである。

エネルギー等分配則と「温度」の中身

古典統計力学では、エネルギーに2乗で入る自由度1つあたり平均½kTが割り当てられる。円板はx・yの2方向に動くので1分子あたりの平均運動エネルギーはkT(3次元の単原子気体なら3/2 kT)。表示される「測定温度」はこれを逆に使い、全分子の½v²の平均をkTとしている。

円板は回転しない。実際のN₂やO₂には回転の自由度が2つ加わり、同じ温度でもより多くのエネルギーを持つが、このモデルにはその部分がない。

観察1:1本の棒が曲線になるまで

既定値(2,500個、半径2.5px)でリセットすると、141px/s付近の棒が数秒で左右両方に崩れる。衝突では片方が速く、もう片方が遅くなることが多いからだ。分子数を500に減らすと衝突が減って緩和が遅くなり、ヒストグラムのばらつきも大きくなる。揺らぎは1/√N程度でしか小さくならない。

再生速度を落としてキャンバスを押し、1つの分子を追跡すると、短い直線がでたらめに折れ曲がるランダムウォークが見える。空気中の微粒子のブラウン運動と同じ構造だ。

観察2:PA/NkTが1からずれる理由

理想気体ならPA = NkTが成り立つ。ツールは壁が受け取った運動量から圧力を測ってこの比を表示する。ところが円板には大きさがあり、他の円板がいる場所には入れない。使える面積が減るぶん壁に当たる回数が増え、比は1より大きくなる。

占有率η = Nπr²/Aで見積もれる。800×580pxのキャンバスで既定値ならη ≈ 2,500 × 19.6 ÷ 464,000 ≈ 0.11。剛体円板の近似式Z = (1 + η²/8)/(1 − η)²に入れると約1.25。半径を1.5pxにするとη ≈ 0.04、Z ≈ 1.08で理想気体に近づく。キャンバスの大きさは画面ごとに違うので、自分の画面の幅と高さで計算して比べるとよい。ηが0.7を超える組み合わせ(半径8px × 8,000個など)では、入るぶんだけ入れて案内を表示する。それより詰めると円板が重なり、衝突ではなく位置補正が圧力を生むのでPA/NkTが意味を失うからだ。0.7付近ではHenderson式は実際より大きく(約17)、シミュレーションの値は9前後になる。

本物の空気に置き換えると

3次元では最確速度√(2kT/m)、平均√(8kT/πm)、二乗平均平方根√(3kT/m)。窒素(1分子4.65×10⁻²⁶kg)を300Kに置くとkT = 4.14×10⁻²¹Jで、それぞれ約422、476、517m/s。音速(約350m/s)より速い。それでも香りがゆっくり広がるのは、常温常圧では分子が数十ナノメートルごとに衝突して向きを変えるからだ。

例

温度を4倍にする

入力
300K → 1,200K
結果
3つの速度がすべて2倍:200 / 250.7 / 282.8 px/s

速さは√Tに比例する。ツールは温度変更時に全速度へ同じ倍率(ここでは2)を掛けるので、分布の形を保ったまま横に伸びる。

平均より速い分子の割合

入力
2次元分布で v > 平均速度
結果
exp(−π/4) ≈ 45.6%

2次元では速さがvを超える確率がexp(−mv²/2kT)と簡単に積分できる。速い側の裾が長く平均を押し上げるため、平均より速い分子は半分に満たない。

使い方

  1. リセットして全分子を同じ速さで出発させる。
  2. ヒストグラムが理論曲線に重なっていく様子を見る。
  3. 温度・分子数・半径を変え、点線の速度とPA/NkTを比べる。
  4. キャンバスを押して1つの分子を追跡する。

よくある質問

温度を上げると一瞬で速くなるのはなぜ?

加熱過程は計算せず、全速度に同じ倍率を掛けて平均エネルギーを新しい温度に合わせているため。実際の気体は熱い壁との衝突で徐々に温まる。

教科書の数値と合わない

教科書の多くは3次元でf(v) ∝ v²·exp(…)。ここは平面上の円板でf(v) ∝ v·exp(…)なので代表速度の係数が異なる。

分子を大きく多くすると詰まって見える

詰め込みの限界である。剛体円板は占有率0.7前後で固体のように並び始め、最密充填は約0.907。その近くではPA/NkTが急に大きくなる。

エネルギーが保存されるのに分布が変わるのはなぜ?

総量は同じでも、マクスウェル・ボルツマン型に分ける方法の数が圧倒的に多い。衝突はエネルギーをランダムに配り直すだけなので、最もありふれた配分に落ち着く。

補足

Z = (1 + η²/8)/(1 − η)²は剛体円板気体の経験的状態方程式(Henderson近似)で、占有率が低いほど正確。

分子間引力も回転もないため、凝縮やファンデルワールス効果は現れない。

出典

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