ローレンツ・アトラクターベータ
数千個の粒子がバタフライ効果で描くローレンツ・アトラクターを3Dで観察
このツールはまだ安定化中のベータ版です。結果に違和感があればお知らせください。
すべての粒子は (1, 1, 20) 付近のごく小さな雲から出発し、ローレンツ方程式 dx/dt = σ(y−x), dy/dt = x(ρ−z)−y, dz/dt = xy−βz に従います。最初はひとかたまりで動きますが、やがて互いに離れ(バタフライ効果)、二枚の翼を行き来するストレンジ・アトラクター全体を埋め尽くします。ドラッグで視点を回してみましょう。ρ を1未満にするとすべて原点へ、約24.74未満にすると2つの固定点のどちらかへ吸い込まれます。
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ローレンツ・アトラクターについて
画面の点はすべて、ローレンツ方程式 dx/dt = σ(y − x)、dy/dt = x(ρ − z) − y、dz/dt = xy − βz に従う粒子です。初期値では3,000個が (1, 1, 20) を中心とする一辺0.5の小さな箱の中にランダムに置かれて出発し、各粒子は0.004以下の時間刻みで RK4 積分されます。尾は直近16フレームの位置を結んだものです。
下の「時間」は方程式の中の無次元時間で、1×速度では実時間1秒あたりモデル時間0.5が進みます。「広がり」は x・y・z 各軸の標準偏差の和で、出発時は約0.44。粒子の雲がまだひと塊か、アトラクター全体に散ったかを示します。
x・y・z はもともと何だったか
ローレンツが1963年の論文で導いたこの3式は、下から温められる流体層の対流を極端に簡略化したモデルです。x は対流ロールの強さ(符号が回転の向き)、y は上昇流と下降流の温度差、z は鉛直の温度分布が直線からずれる度合いに当たります。σ はプラントル数(粘性と熱拡散の比)、ρ は臨界値で割ったレイリー数(加熱の強さ)、β は対流セルの形から決まる定数。ローレンツが使った値が σ = 10、β = 8/3、ρ = 28 で、「古典値」ボタンはこの値に戻します。
粒子が片方の翼を回っている間は対流が一方向に回り、反対の翼へ移る瞬間は回転の向きが逆転したことを意味します。次の逆転まで何周するかを前もって言えない、というのがこのモデルの要点でした。
観察1:雲が裂ける速さ
初期値でリセットして広がりを見てください。同じ初期分布で計算すると、モデル時間1で広がりは約1.2、時間2になる前に30前後まで跳ね上がりました。1×速度なら約4秒で雲が左右の翼に分かれます。出発点付近は x がほぼ0なので、雲の一部は左、一部は右の翼へ直行するからです。
その後、広がりは20〜30の間を上下するだけでそれ以上は増えません。アトラクター自体の大きさが有限だからです。初期の差がずっと小さければ(たとえば0.0001)、雲はモデル時間8〜10の間ひとつの点のように動き、その後10倍、100倍と広がって同じ結末に至ります。このツールは初期の広がりを0.5に固定しているので、そのゆっくりした指数成長の段階は見られません。
観察2:ρ を下げてカオスを消す
ρ < 1 では加熱が弱く対流が起きません。ρ = 0.5 にすると全粒子が原点(対流なし)へ落ちます。ρ > 1 では2つの固定点 C± = (±√(β(ρ−1)), ±√(β(ρ−1)), ρ−1) が現れます。一方向に回り続ける定常対流です。ρ = 20 なら C± = (±7.12, ±7.12, 19) で、粒子は出発点に応じてどちらかへらせんを描いて落ち着きます。
固定点が不安定になる値は ρ_H = σ(σ + β + 3)/(σ − β − 1)。σ = 10、β = 8/3 を入れると 10 × 15.667 ÷ 6.333 = 24.74 で、説明文の「約24.74」はここから来ています。ただし約 24.06 < ρ < 24.74 では安定な固定点とカオスのアトラクターが共存します。ρ = 24.5 で動かすと、モデル時間60を過ぎても多くの粒子が両翼を行き来しています。さらに低い約13.93〜24.06では、しばらくカオス的にさまよった後に固定点へ落ちる過渡カオスが現れます(Kaplan・Yorke、1979年)。
リアプノフ指数で読む予測の限界
クラシック値での最大リアプノフ指数は約0.906。近い2本の軌道の距離が平均して e^{0.906t} で開くという意味です。距離が2倍になるのに ln 2 ÷ 0.906 ≈ 0.77、10倍に2.54のモデル時間がかかります。初期誤差10⁻⁶、アトラクターの大きさを20とすると、予測が崩れるのはおよそ ln(2×10⁷) ÷ 0.906 ≈ 18.6。誤差を1000分の1にしても約7.6延びるだけです。
3つの指数の和は −(σ + 1 + β) = −13.67 で負です。粒子の塊の体積はモデル時間1ごとに e^{−13.67} 倍に縮みます。ある方向には伸ばされ、別の方向にはずっと強く押しつぶされるので、粒子は体積ゼロの薄い板の上に集まります。Sprott の計算ではこのアトラクターの次元は約2.06で、面よりほんの少し厚いフラクタルです。
このシミュレーションが省いていること
ローレンツ方程式は実際の天気ではありません。対流の問題をフーリエモード3つだけ残して切り詰めたモデルで、ρ = 28 ほど強く加熱すると実際の流体はこうは動きません。ローレンツが示したのは、これほど単純な決定論的な系でも非周期的で予測不能な運動が生じるということでした。画面は立体を回転して投影したものなので、翼が重なる角度では軌道が交差して見えますが、3次元では軌道は交わりません。β スライダーは2.67と表示されますが、「古典値」ボタンは正確な8/3を入れます。
例
ρ = 20 の固定点
- 入力
σ 10、ρ 20、β 8/3- 結果
C± = (±√(8/3 × 19), …, 19) = (±7.12, ±7.12, 19)
粒子は2点のどちらかへらせんを描いて入る。計算結果の座標はこの値と小数第2位まで一致した。
予測可能な時間
- 入力
最大リアプノフ指数0.906、初期誤差10⁻⁶、許容誤差20- 結果
t ≈ ln(2×10⁷) ÷ 0.906 ≈ 18.6(モデル時間)
初期誤差を10⁻⁹にしても t ≈ 26.2 で、7.6延びるだけ。
使い方
- σ・ρ・β スライダーは粒子をそのままに方程式だけを変える。粒子数を変えると最初からやり直す。
- 「最初から」で粒子の雲を (1, 1, 20) 付近に撒き直す。
- ドラッグで視点を回し、広がりと時間を見ながら雲がいつ散るかを確かめる。
よくある質問
蝶の形だからバタフライ効果と呼ぶのですか?
違います。名前はローレンツが1972年12月のアメリカ科学振興協会(AAAS)年会で行った講演の題「ブラジルで蝶が羽ばたくとテキサスで竜巻が起こるか」に由来します。アトラクターが蝶に見えるのは偶然です。
なぜ軌道は同じ道を繰り返さないのですか?
周期軌道は無数にありますが、すべて不安定です。粒子はその近くをしばらくたどっては離れることを繰り返し、閉じた輪になりません。
ρ を60まで上げるとどうなりますか?
アトラクターは大きくなり上へ移動します(固定点の z は ρ−1)。二枚翼の構造は保たれます。大きさをそろえて見れば ρ = 28 の絵とよく似ています。
「最初から」を押すと毎回同じ絵になりますか?
押すたびに乱数の種が変わり、初期の雲が少しずつ違います。数秒で個々の粒子の位置はまったく変わりますが、アトラクター全体の形は毎回同じです。
関連ガイド
出典
- E. N. Lorenz, Deterministic Nonperiodic Flow, J. Atmos. Sci. 20, 130–141 (1963)
- J. C. Sprott, Lyapunov Exponent and Dimension of the Lorenz Attractor
- J. L. Kaplan, J. A. Yorke, Preturbulence: a regime observed in a fluid flow model of Lorenz, Commun. Math. Phys. 67, 93–108 (1979)
基準日: