カルマン渦列の風洞ベータ

風の渦で電線を鳴らし、煙突の揺れを抑える

このツールはまだ安定化中のベータ版です。結果に違和感があればお知らせください。

風の日に電線が「ウーン」と鳴るのを聞いたことはありますか?線の後ろで渦が交互にはがれるたびに線が震えて音が出ます。風の強さを変えて、線に目標の音を歌わせましょう。

目標 目標の音 ±5% を 2 秒保つ

風洞を準備中…

横に押す力

渦が上下交互にはがれるたび、物体は反対側へ押されます。

なぜ風は柱の後ろで左右に揺れるの?

風が柱をかすめると、表面近くの空気は摩擦で遅くなります。この遅い層は柱の裏側まで沿って回りきれずにはがれ、巻き込まれて渦になります。

風が弱いと上下一対の渦が柱の後ろにじっと付いています。ある強さを超えると対称性が崩れ、上 → 下 → 上… と交互にはがれていきます。このジグザグの渦の列がカルマン渦列です。

片側で渦がはがれるたびに柱は反対側へ押されるので、柱は f ≈ 0.2 × 風速 ÷ 直径 で左右に揺れます。風の日に電線が鳴る音(エオルス音)、煙突や橋の揺れ、衛星写真で島の後ろに並ぶ雲の渦もこの現象です。

柱の後ろに尾板を付けると上下の渦がやり取りできず、交互にはがれるリズムが崩れます。実際の煙突はらせん状の帯(ストレーキ)を巻き、高さごとに渦がはがれるタイミングをずらして同じ効果を出します。

画面の空気は渦がはっきり見えるよう実際よりずっと粘っこく計算しています(レイノルズ数は数十〜数百)。この範囲ではストローハル数が実際の電線の 0.2 より小さく(細い線で約 0.15〜0.16、太い線で約 0.2)、同じ音を出すには式より強い風が要ります。風が強いほど音が高く、太い線ほど低く鳴るという法則は同じです。

カルマン渦列の風洞について

この風洞は2次元の格子ボルツマン法(D2Q9、BGK衝突)で空気の流れを計算している。300×120マスの左から一様な風が入り、右端の30列は渦を吸収する層になっている。物体表面はぶつかった分布をそのまま跳ね返す境界で、そのとき受け渡された運動量を足し合わせて、物体が受ける抗力と横向きの力を毎ステップ測る。煙の筋は速度場に乗って流れるだけの粒子で、流れには影響しない。

画面の中の空気は本物よりずっと粘っこい。格子の動粘性係数を0.012に固定しているため、レイノルズ数は数十〜数百にとどまる。実際の電線はReが数千だ。したがってこのツールは「渦がなぜ、どんなリズムで離れるか」を見るためのもので、実際の電線の音量や煙突にかかる応力を予測するものではない。

渦が交互にはがれる理由

円柱の前で分かれた流れは表面に沿って進み、側面付近ではがれる。はがれた2枚のせん断層は後ろで巻き上がって渦になるが、上下が完全に対称なままの状態は不安定だ。片方の渦が少し大きくなると反対側のせん断層を引き寄せて断ち切り、次は反対側が同じことをする。上、下、上、下と交互にはがれた渦がジグザグに並んだものがカルマン渦列である。

渦が1つはがれるたびに円柱まわりの循環が変わり、柱は横へ押される。横力のグラフが正弦波のように揺れるのはそのためで、上下1対で1周期になる。Williamson(1996)のまとめでは、円柱後流の周期的な渦放出はRe ≈ 49付近で始まる。風をごく弱くすると、このツールでも揺れが止まり、後ろに双子渦が張り付いたままになる。

ストローハル数0.2はどこまで成り立つか

放出周波数f、直径D、風速UでつくるSt = fD/Uは、円柱ではReがおよそ300から10⁵あたりまで0.2付近でほぼ一定だ。そのため電線の音の高さはf ≈ 0.2·U/Dで見積もれる。直径1cmの線に11m/sの風なら0.2 × 11 ÷ 0.01 = 220Hz、ラ(A3)の音になる。

ただしReが100前後のこの画面では、Stは0.2より小さくなる。Williamsonの測定ではRe 100で約0.16、Re 160で約0.19。細い線(10マス)に11m/sを当てると格子Reは約73でStは0.15前後、ツールが測る音は220Hzより低い。目標音に合わせるのに式より強い風が要るのはこのためだ。ツールで測ると、細い線のラ(220Hz)は約13.4m/s(St約0.16)、ミ(165Hz)は約10.8m/s(St約0.15)、太い線のラ(110Hz)は約10.9m/s(St約0.20)で鳴る。目標音に合わせると、この風速とSt 0.2の式による風速を並べて表示する。幅120マスの風洞に直径20マスの円柱を置くと閉塞率が約17%あり、その分Stはやや上がる。ツールは測定Stの下に、この効果を差し引いた「閉塞補正St」も表示する。Allen–Vincentiの式で物体が感じる風速をU·(1 + π²β²/12 + C_D·β/4)に直して計算した値だ(β = 閉塞率、C_D = 測定した抗力係数)。直径20マス、10m/s(Re約133)で測ると測定St 0.200、C_D約1.67で、補正Stは0.183。Williamsonの式による開けた空間の値0.179に近い。

煙突や橋がこの振動を嫌う理由

放出周波数が構造物の固有振動数と一致すると、小さな横力が周期ごとに積み重なって揺れが大きくなる。さらに構造物が揺れ始めると、渦放出がその揺れに歩調を合わせる同期現象(ロックイン)が起き、ある風速の幅にわたってエネルギーが注ぎ込まれ続ける。鋼製の煙突にらせん状のフィン(ストレーキ)を巻くのは、渦が高さ方向で一斉にはがれないようにするためだ。

このツールの煙突課題は2次元なので、らせんは作れない。2次元で効くのは2枚のせん断層を出会わせないことで、柱の後ろに置く板(スプリッタープレート)がその役をする。自由風洞の「尾板」がこれにあたる。板の長さが直径程度あると横力の振幅ははっきり減る。

形ごとの見どころ

  • 円柱:はく離点が曲面に沿って少しずつ動くので、揺れがなめらか。
  • 角柱・立てた板:角で必ず同じ場所からはがれる。後流が広く、平均抗力は円柱より大きく、周期も長い。
  • 翼(迎角8°):渦は弱く、横力の平均がゼロでない。揺れの代わりに一方向へ押し続ける力、つまり揚力が生じる。

例

電線の歌:細い線でラ(A3)

入力
直径1cm、目標220Hz、St = 0.2と仮定
結果
必要な風速 U = fD/St = 220 × 0.01 ÷ 0.2 = 11m/s

実際の空気ならRe = 11 × 0.01 ÷ 1.5×10⁻⁵ ≈ 7,300でSt 0.2がよく合う。画面内のReは約73なので11m/sでは約170Hz(St約0.15)にしかならず、220Hzは約13.4m/sで鳴る。

太い線で1オクターブ下

入力
直径2cm、目標110Hz
結果
St 0.2なら同じ11m/sで周波数は半分

f = St·U/Dなので直径が2倍なら音は1オクターブ下がる。ただし太い線は格子Reも2倍(約147)でStが約0.20に上がるため、格子内では11m/sで細い線約170Hz、太い線約111Hzと、1オクターブより狭い。

煙突課題の条件

入力
直径20マス、風速12m/s(格子速度0.096)、ν = 0.012
結果
格子Re = 0.096 × 20 ÷ 0.012 = 160

この領域では渦放出がとても規則的なので、壁を描いたあと揺れが基準の35%以下になったかを比べやすい。

使い方

  1. 「電線の歌」で風を少しずつ強め、横力のグラフが揺れ始める瞬間を探す。
  2. ストローハル数とレイノルズ数の表示を見ながら目標音に合わせる。
  3. 「揺れる煙突」では柱の後ろや横に壁を描き、揺れの比率を比べる。
  4. 自由風洞で形を変え、表示を「渦の色」にして回転の向きを確かめる。

よくある質問

電線の「ウーン」という音は電線が震えて出ている?

主な原因は電線の後ろで交互にはがれる渦がつくる圧力変動(エオルス音)で、電線がほとんど動かなくても鳴る。放出周波数が電線の固有振動数と重なると、電線自体が大きく振動することもある。

なぜ音の高さは風速に比例する?

St = fD/Uが広い範囲でほぼ一定だから。直径が同じならfはUに比例し、風速が同じならDに反比例する。

画面のレイノルズ数が実際より小さいのはなぜ?

マス数が限られているので、本物の空気ほどさらさらにすると計算が不安定になる。そこで粘性を大きくとっており、Reは数十〜数百になる。渦の形とリズムは似るが、乱流で乱れた実際の後流とは違う。

3次元だと何が変わる?

実際の円柱後流ではRe 190付近から軸方向に波打つ3次元構造が現れる(Williamson 1996)。このツールは2次元なので、それ以上でもきれいな渦列が保たれる。

補足

力の値は格子単位で、Nには換算していない。同じ条件の中での比として比べる。

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出典

基準日:

プライバシーとデータの扱い