3D 風洞ラボベータ
3D モデルをマッハ 0〜20 の風洞に入れ、後流と衝撃波を見ながら抗力・揚力を測る
このツールはまだ安定化中のベータ版です。結果に違和感があればお知らせください。
ドラッグで回転、ホイールで拡大
前から見た影が同じでも、後ろの形しだいで抗力は変わります。平板 → 立方体 → 球 → 水滴と替えていくと、収束度が 60% を超えたところで下の記録板に Cd がたまります。後ろがなめらかに絞られるほど後流が薄くなり Cd が下がります。
測った形 収束度 60% 以上で記録されます
処理中…
0.0
停止していません。計算が終わると結果が表示されます。
3D 風洞ラボについて
この風洞は速さによって2種類の解法を使い分ける。マッハ1.2未満では3次元の格子ボルツマン法(D3Q19、BGK衝突+スマゴリンスキー乱流モデル)で物体まわりの流れを直接計算し、表面で受け渡した運動量から力を測る。マッハ1.2以上では流れ場を計算せず、表面の三角形ごとに流れに対する傾きから圧力係数を決めて足し合わせる局所表面傾斜法(斜め衝撃波、プラントル–マイヤー膨張、修正ニュートン理論)を使う。摩擦抗力は基準温度法で別に加える。
2つの解法の信頼度は違う。超音速・極超音速側は閉じた式なので公表値とよく合う(マッハ10で球のC_D ≈ 0.92)。亜音速側はブラウザで動かせる格子(最大128×68×68)に縛られ、角のある物体では教科書値に近いが、なめらかな曲面では大きく外れる。以下でその理由を説明する。
実際のレイノルズ数と格子のレイノルズ数
初期条件(基準長さ1m、68m/s、海面)の実際のレイノルズ数は Re = UL/ν = 68 × 1 ÷ 1.46×10⁻⁵ ≈ 4.7×10⁶。これを格子にそのまま移すには格子の粘性をごく小さくする必要があるが、BGK衝突は粘性が約0.0016より小さいと不安定になる。そこで粘性はその下限で止まり、格子Reは「高精細」(基準長さ17マス)で 0.11 × 17 ÷ 0.0016 ≈ 1,170 にとどまる。足りない分はスマゴリンスキーモデルが小さな渦のエネルギー散逸をまねて補う。
画面に実際のReと格子Reを並べて表示しているのは、この差を隠さないためだ。抗力係数はReによって変わるので、2つが違えば測定値も実物と違いうる。
どんな物体なら信頼できるか
形状対決で平板→立方体→球→水滴の順にC_Dが下がる順序そのものは正しく出る。絶対値を設計に使うのではなく、後ろ姿が抗力を決めるという傾向を見る用途に向いている。
- 平板・立方体のように角の鋭い物体:流れが必ず角ではがれるのでReに鈍感。平板は教科書値1.17に対して約1.26で、±10%に収まる。
- 球・水滴・翼のように流れが曲面に沿ってからはがれる物体:はく離位置は境界層の状態で決まるが、11〜28マスで描いた物体では境界層を解像できない。球は0.47ではなく0.8前後、水滴は0.05の数倍になる。
- 翼:迎角を上げると揚力は増えるが、傾きは薄翼理論(2π/rad)の半分ほどで、揚抗比は実物よりずっと低い。
球の抗力危機:格子が再現できないもの
なめらかな球のC_DはRe 10³〜2×10⁵で0.4〜0.5とほぼ一定だが、Re約3×10⁵付近で0.1〜0.2まで急に下がる。境界層が層流から乱流に変わって表面に長く張り付き、はく離点が後ろへずれて後流が細くなるためだ。この現象は境界層の内部まで解像しないと見えないので、マス数の少ないこのツールには現れない。ゴルフボールのディンプルは、この遷移をより低いReで起こす仕掛けである。
高速側:再突入カプセルと衝撃波
マッハ5以上の鈍い物体では、圧力係数が流れの当たる角度の正弦の2乗に比例するという修正ニュートン理論がよく合う。よどみ点の圧力係数はマッハ数が大きくなるほど約1.84(γ = 1.4)に近づき、C_Dはマッハ数にほとんど依存しなくなる。再突入課題の70°球円錐カプセルはこの方法で約1.64となり、公表値1.68に近い。マッハ1.2〜5では、圧縮される面を斜め衝撃波の関係式、膨張する面をプラントル–マイヤーの関係式で解く。
マッハ0.7〜1.2の遷音速域では、どちらの方法も成り立たない。ここで使う格子ボルツマン法は非圧縮に近い解法で、マッハ0.3を超えると原理的に合わず、表面傾斜法は超音速を前提にしている。ツールはこの範囲で警告を出す。
空気、水、火星大気
媒質を水にすると動粘性係数は空気の約1/15(1.0×10⁻⁶m²/s)になる。同じReをずっと遅い速さで得られるので、実際の研究でも水槽や回流水槽で空気の流れを代用することがある。火星大気は主に二酸化炭素(γ ≈ 1.29)で、同じマッハ数でも衝撃波後の圧力が地球と違う。
例
初期条件のレイノルズ数
- 入力
L = 1m、U = 68m/s、海面の空気 ν = 1.46×10⁻⁵m²/s- 結果
実際のRe ≈ 4.7×10⁶、マッハ0.20、格子Re ≈ 1,170(高精細)
68 ÷ 340.3 = 0.20なので非圧縮の仮定が成り立つ。格子Reは実際より約4,000倍小さい。
係数を力に戻す
- 入力
直径1mの球、68m/s、C_D = 0.47(教科書値)- 結果
F = ½ρU²AC_D = 2,832Pa × 0.785m² × 0.47 ≈ 1,050N
ツールは格子の力を直接ニュートンに換算せず、係数を取り出してからこの式で戻す。格子の測定値0.8を使うと約1,780Nとなり過大になる。
水で同じReを得る
- 入力
1mの物体、目標Re = 2×10⁶- 結果
水なら2.0m/s、空気なら約29m/s
U = Re·ν/L:2×10⁶ × 1.0×10⁻⁶ = 2.0m/s、2×10⁶ × 1.46×10⁻⁵ = 29m/s。
使い方
- シナリオを選び、モデル・姿勢・速さ・高度を決める。
- 収束度の表示が十分に満ちるまで待ってからC_D・C_Lを読む。
- 翼は迎角スイープ、高速モデルはマッハスイープで曲線を得て、CSVで保存する。
よくある質問
球の抗力係数が0.47ではなく0.8くらいになる。バグ?
格子解像度の限界だ。球まわりの流れは境界層がどこではがれるかで決まるが、20マス前後の球では境界層を解像できず、はく離が早く起きて後流が広がる。角のある平板・立方体は教科書値に近く出る。
解像度を上げれば合う?
マスを増やすほど近づくが、実際のRe 10⁶程度の境界層を解像するにはブラウザで動かせる格子の数千倍の計算が必要になる。
超音速の結果は信頼できる?
鈍い物体や薄い翼・くさびのように、この方法が前提とする形では公表値とよく合う。衝撃波どうしの干渉や大きなはく離域は表面傾斜法では表せない。
乗用車やロケットに教科書値がないのはなぜ?
乗用車は地面効果や車輪・床下の形で、ロケットは飛行条件で値が大きく変わり、1つの数字では公平に比べられないからだ。
関連ガイド
出典
- NASA Glenn Research Center — Drag of a Sphere
- NASA Glenn Research Center — Shape Effects on Drag
- NASA Glenn Research Center — Reynolds Number
- C. H. K. Williamson, Vortex dynamics in the cylinder wake, Annu. Rev. Fluid Mech. 28 (1996)
基準日: