クラドニ図形ベータ
振動板の砂が節線に集まりクラドニ図形を描く様子を観察
このツールはまだ安定化中のベータ版です。結果に違和感があればお知らせください。
板の振動は定常波 A = cos(nπx)cos(mπy) ± cos(mπx)cos(nπy) で表されます。砂粒は振幅 |A| が大きい場所で激しく跳ね、振幅が0の節線ではほとんど動かないため、時間がたつと節線にだけ集まって模様を描きます。周波数が高い(n, m が大きい)ほど模様は細かくなります。振幅分布を表示すると、赤と青は互いに逆向きに動く領域です。
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クラドニ図形について
このツールは一辺1の正方形板の振幅を A(x, y) = cos(nπx)·cos(mπy) ± cos(mπx)·cos(nπy) で計算します。砂粒は毎フレーム、その場所の|A|に比例する距離だけランダムな方向に跳ねます。大きく揺れる場所の粒は追い出され続け、A = 0の節線に落ちた粒だけがとどまるので、やがて砂が節線をなぞります。
画面下の統計にある|A|は、全粒子の位置での|A|の平均です。砂を均一にまいた直後はどのモードでも約0.58で、図形ができあがるほど0に近づきます。模様の完成度を示すメーターとして使えます。
1787年のクラドニとソフィー・ジェルマンの受賞
エルンスト・クラドニは1787年の著書『音の理論に関する発見』で、金属板の縁をバイオリンの弓でこすって鳴らし、上にまいた砂が描く図形を数十種類記録しました。音を目で見る最初の体系的な方法とされます。1808年にパリで実演を見たナポレオンは、これを数学的に説明した者に賞を出すよう求め、科学アカデミーは1809年に「弾性面の振動の数学的理論を与え、実験と比較せよ」という懸賞課題を出しました。
ラグランジュが解くには新しい解析学が必要だと述べたこともあり、応募者はほとんどいませんでした。ソフィー・ジェルマンの1811年の第1回応募は運動方程式が正しく立てられていないと評され、1813年の第2回は計算の誤りで佳作にとどまりました。第3回の論文が1816年1月8日に大賞を受け、彼女はパリ・アカデミーの賞を受けた最初の女性になりました。ただし板の縁の境界条件はまだ誤っており、1850年にキルヒホッフが自由端には条件が二つしか課せないことを示して板の理論が整いました。縁が自由な正方形板の実際の図形を近似的にでも計算したのは、1909年のヴァルター・リッツが最初です。
この式と本物の板の違い
cos(nπx)cos(mπy)は縁で傾きが0になる形です。中央を固定し縁を自由にした本物のクラドニ板では、縁で曲げモーメントとせん断力が0になる条件が必要で、その解は単純な余弦では書けません。そのため、このツールの図形は対称性や節線の増え方といった全体の性格は本物に似ていますが、線の正確な位置や曲がり具合は異なります。
二つの項を足し引きするのは正方形の対称性のためです。(n, m)と(m, n)のモードは振動数が同じ(縮退)なので、板は両者を混ぜた形で振動します。マイナスを選ぶとxとyを入れ替えたときAの符号が反転するため、対角線x = y上でA = 0となり、対角線は必ず節線になります。n = mでマイナスだと板全体が0になるので、ツールは自動でプラスに切り替えます。
表示される振動数は60Hz × (n² + m²) / 2で、(1, 1)を60Hzとした相対値です。薄い板は曲げ剛性のため振動数が波数の2乗に比例する(ω ∝ k²)ので、nとmを両方2倍にすると振動数は4倍になります。太鼓の膜なら2倍にとどまります。実際の金属板のHzは厚さ・材質・大きさで決まるので、画面の数字を特定の板にそのまま当てはめることはできません。
砂は節へ、軽い粉は腹へ
節線に集まるのは重く粗い砂の場合です。1831年にファラデーは、石松子(ヒカゲノカズラの胞子)のようなごく軽い粉は逆に最も激しく揺れる腹に小山を作ることを報告し、振動する部分の上の空気にできる小さな渦に軽い粉が捕らえられ、重い砂はその渦を突き抜けて飛ばされると説明しました。このツールは空気を扱わないので、すべての粒が重い砂として振る舞います。
粒の動き自体も物理法則ではなく要約したルールです。本物の砂は板の上向き加速度がgを超えたときだけ浮き上がり、板の傾きに沿って滑ります。ここでは跳ねる距離を|A|に比例させ、高次モードほど節線の間隔が狭いので最大移動距離をnとmの大きいほうで割っています。最終的に砂が節線に集まる点は同じですが、図形ができる速さや鮮明さから実際の板の減衰や加振の強さを推定することはできません。
例
(1, 2)モード:符号で変わる対角線
- 入力
n = 1、m = 2、符号 − / 符号 +- 結果
−:対角線x = yが節線。+:もう一方の対角線x + y = 1が節線。表示はどちらも150Hz
+のときn + mが奇数なのでA(1−y, 1−x) = −A(x, y)が成り立ちます。反対の対角線上の点はこの変換で自分自身に移るのでA = −A、つまりA = 0です。同じ振動数で符号一つで図形が90°回ったように見える理由です。
プリセット間の振動数比
- 入力
(2, 3) → (4, 5) → (5, 8)- 結果
390Hz → 1,230Hz → 2,670Hz
それぞれ60 × 13 / 2、60 × 41 / 2、60 × 89 / 2です。(2, 3)から(5, 8)で約6.8倍、3オクターブ近く上がります。
使い方
- 振動数プリセットを押すか、n・mと符号を直接選ぶ。
- 振動の強さと粒の数を調整する。
- 振幅分布を表示し、赤と青の領域の境界に砂の線が重なるか確かめる。
- 砂をまき直して、図形ができる過程を最初から見る。
よくある質問
本物のクラドニ板ではどのくらいの振動数を使う?
板の厚さ・材質・大きさで変わるので一つには決まりません。教材用の金属板は加振器で数百Hzから数kHzまで掃引し、図形がはっきり出る共振点を探すのが一般的です。このツールのHzはモード間の比を示す相対値です。
円形の板だと図形はどう違う?
円板の節線は直径方向の直線と同心円に分かれます。クラドニは、直径m本・円n個のモードの振動数がおおよそ(m + 2n)のべき乗に比例するという経験則を残し、これをクラドニの法則と呼びます。このツールは正方形板のみを扱います。
同じn・mで符号だけ変えるとなぜ別の図形に?
(n, m)と(m, n)は同じ振動数を持つので、和も差も実現しうる振動です。和はx = yに関して対称、差は反対称になるので、節線の配置が変わります。
サイマティクスと同じもの?
サイマティクスは振動が生む模様全般の呼び名で、クラドニ図形はその最も古く、よく研究された例です。
出典
- Wikipedia — Ernst Chladni (Entdeckungen über die Theorie des Klanges, 1787; Chladni's law)
- Wikipedia — Sophie Germain (Paris Academy prize on elastic surfaces, 1809–1816)
- M. Faraday, On a peculiar class of acoustical figures, Phil. Trans. R. Soc. 121, 299–340 (1831)
- A. W. Leissa, The historical bases of the Rayleigh and Ritz methods, J. Sound Vib. 287 (2005)
- Wikipedia — Vibration of plates (Kirchhoff–Love plate theory)
基準日: