チューリング・パターン・ラボベータ

2つの物質の反応と拡散が生むチューリング模様を観察

このツールはまだ安定化中のベータ版です。結果に違和感があればお知らせください。

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F–k マップ
マップをクリックして F と k を選びます。点は代表的な模様です。

架空の2つの化学物質 U と V が広がりながら反応します(U + 2V → 3V)。U は絶えず供給され(F)、V は取り除かれます(k)。V が U よりゆっくり拡散するため一様な状態が崩れ、アラン・チューリングが予言した模様がひとりでに現れます。F と k を少し変えるだけで、斑点・縞・迷路・分裂する細胞のようにまったく違う模様になります。キャンバスをドラッグして種を落としてみましょう。

チューリング・パターン・ラボについて

このツールはグレイ–スコット型の反応拡散方程式を正方格子の上で解きます。各セルに2つの濃度 u, v があり、毎ステップ u' = Du∇²u − uv² + F(1−u)、v' = Dv∇²v + uv² − (F+k)v で更新されます。uv² の項は反応 U + 2V → 3V、F は外から U を補給する速さ、k は V を余分に取り除く速さです。ラプラシアンは3×3のステンシル(中心 −1、上下左右 0.2、斜め 0.05)、時間刻みは1、端は反対側とつながる周期境界です。拡散係数の初期値 Du = 1.0、Dv = 0.5 は Karl Sims のチュートリアルと同じ設定です。

空の皿は u = 1、v = 0 で、この状態は放っておいても変化しません。キャンバスをドラッグして V を少し落とすと模様が始まります。同じ F, k でも序盤の形が毎回違うのは種の置き方が違うからで、長く回すとその (F, k) に固有の模様に落ち着くか、いつまでも動き続けます。

チューリングが1952年に示したこと

アラン・チューリングは論文「形態形成の化学的基礎」(1952)で、互いに反応しながら組織内を拡散する数種類の物質(モルフォゲン)だけで、はじめは一様な組織に模様が生まれうると論じました。拡散はふつう濃度差をならす働きをしますが、2つの物質の拡散速度が違うと、逆に一様な平衡が不安定になり、小さなゆらぎが一定間隔の模様へ育ちます。これが拡散誘起不安定性、いわゆるチューリング不安定性です。

このツールでは Dv を Du と同じ1.0まで上げると条件の重要さが分かります。同じ更新式を別に1万ステップ回して確かめると、「細胞分裂」「迷路」δ の座標はいずれも Dv = 1.0 で種がすべて消え、空の皿に戻りました。Dv = 0.5 なら同じ種から模様が育ちます。なお、チューリング自身はグレイ–スコット模型を使っていません。この反応は1980年代の化学反応器の研究から生まれたもので、1993年にピアソンが拡散を加えて格子上で計算した形が現在広く使われています。

F–k マップの読み方:一様状態が2つになる境界

拡散項をなくして定常状態を解くと、u = 1, v = 0 のほかに uv = F + k を満たす解があります。この解が存在する条件は F ≥ 4(F + k)²、つまり k ≤ √F/2 − F です。ピアソンの F–k 図にある山なりの曲線がこれで、頂点は F = k = 1/16 = 0.0625 です。

プリセットをこの曲線と比べると面白いことが分かります。「細胞分裂」(F = 0.0367, k = 0.0649)では境界値が √0.0367/2 − 0.0367 ≈ 0.0591 で、k はそれより大きい。つまり V が一様に残る状態がそもそも存在しない領域なのに、局所的な斑点は自分を複製して生き延びます。「サンゴ」(F = 0.0545, k = 0.062)は境界値 ≈ 0.0622 のすぐ内側、「迷路」(F = 0.029, k = 0.057)は境界値 ≈ 0.0561 のすぐ外側です。有名な模様の多くがこの曲線沿いの細い帯に集まっている、というのがマップから読み取れる一番大事な点です。

ピアソンの分類をこのツールでたどる

ピアソンは見つけた模様をギリシャ文字で分類し、のちにロバート・ムナフォ(xmorphia)が分類を拡張して代表的な座標をまとめました。下の値はすべてこのツールの入力範囲(F 0〜0.1、k 0.03〜0.075)に入っているので、数値欄にそのまま入力できます。ただし格子間隔と拡散のスケールはピアソンの元の計算と完全には一致しないため、境界近くの値では隣の分類のように見えることがあります。

  • α(F 0.010, k 0.047):すぐ消える波の断片が入り混じるカオス
  • β(F 0.014, k 0.039):穴が開いたり閉じたりするカオス的な波
  • γ(F 0.022, k 0.051):落ち着かないミミズ状・枝分かれの縞
  • δ(F 0.030, k 0.055):V が広く覆った地に穴(負の斑点)が六角形に並ぶ。ピアソンが本当のチューリング模様と呼んだ領域
  • ε(F 0.018, k 0.055):斑点が分裂し、過密になった所がまとめて消える
  • θ(F 0.030, k 0.057):斑点が輪に育ち、最後は縞の網目になる
  • κ(F 0.050, k 0.063):横に太る縞が生け垣のような迷路をつくる
  • λ(F 0.026, k 0.061):分裂で増えた斑点が六方格子に並ぶ
  • μ(F 0.046, k 0.065):先端から伸びるミミズが平行な縞にそろう
  • ξ(F 0.010, k 0.041):大きく長持ちするらせん波(ムナフォの追加分類)

観察のポイント

模様が止まるか、動き続けるかで分けてみましょう。δ や λ は数千ステップでほぼ静止した格子になりますが、α・β・ξ は最後まで動きます。同じ斑点でも ε では分裂が続き、過密になった一帯がまとめて消える循環を繰り返します。

F を固定して k だけを少しずつ動かすのも良い実験です。F = 0.03 で k を 0.055 → 0.057 → 0.062 と動かすと、穴の格子 → 輪と網目 → まばらな斑点へと変わります。k を曲線の右へ大きく外すと V が持ちこたえられず、皿は空の状態に戻ります。

Du, Dv の上限が1.0なのは数値計算上の理由です。1ステップに陽的オイラー法を1回使う方式なので、拡散係数が大きすぎると値が発散します。

例

「細胞分裂」が境界の外にあることの確認

入力
F = 0.0367, k = 0.0649
結果
境界 k* = √0.0367 / 2 − 0.0367 ≈ 0.0958 − 0.0367 = 0.0591

0.0649 > 0.0591 なので一様な非自明解は存在しません。それでも斑点が分裂して皿を埋めます。斑点は一様状態が崩れた結果ではなく、局所的に自立した構造だということです。

拡散速度の差をなくす

入力
細胞分裂(F 0.0367, k 0.0649)、Du 1.0、128×128 格子に種8個、1万ステップ
結果
Dv 0.5:斑点がおよそ50個に増える / Dv 1.0:V がすべて消える(平均 v = 0)

拡散速度が等しいとチューリング不安定性の前提が消えます。模様をつくるのが反応だけでなく拡散の比であることを、スライダー1本で確かめられます。

κ と μ の比較

入力
κ:F 0.050, k 0.063 / μ:F 0.046, k 0.065
結果
κ は縞が横に太って迷路に、μ は縞が先端から伸びて平行に並ぶ。

座標の差は F で0.004、k で0.002だけで、どちらも境界曲線のすぐ右側ですが、成長の向きが変わります。

使い方

  1. 模様の一覧からプリセットを選ぶか、F–k マップをクリックして座標を決める。
  2. キャンバスをドラッグして V の種を落とし、数千ステップ回す。
  3. 数値欄に F と k を入力し、上の分類の座標を順に訪ねる。
  4. Du, Dv を変えて拡散の比が模様に与える影響を比べる。

主な用語

チューリング不安定性
拡散速度の異なる2物質のために、一様な平衡が空間的に不安定になる現象。
供給率 F
U が外部の貯蔵から補給される速さ。同じ率で U と V が洗い流されもする。
除去率 k
V が追加で失われる速さ。V の総損失率は F + k。
周期境界
右端が左端に、上端が下端につながる境界。模様が端で切れない。

よくある質問

シマウマの縞やヒョウの斑点は本当にこの仕組みでできるのですか?

チューリング機構は動物の模様を説明する有力な枠組みですが、実際にどの分子が関わるかは種ごとに確かめる必要があります。グレイ–スコットは特定の動物の化学ではなく、模様が生まれる原理を示す最も単純な模型の一つです。

何も模様が出ず、画面が空のままです。

u = 1, v = 0 の状態はそのままで安定なので、ドラッグして種をまく必要があります。種をまいてもすぐ消えるなら、k が境界曲線の右へ出すぎています。k を下げてみてください。

同じ F, k なのに他のサイトと模様の大きさが違います。

模様の種類は F, k で決まりますが、模様の間隔は拡散係数と格子のスケールで変わります。このツールは Du 1.0、Dv 0.5、格子1マスを単位にしています。

模様がいつまでも変わり続けるのはバグですか?

いいえ。α, β, ξ のように最後まで落ち着かない領域がもともとあります。単純な式から複雑な時空間パターンが生まれることこそ、ピアソンの論文の主題です。

出典

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