量子トンネルラボベータ

波束が障壁で反射・透過する量子トンネル効果をリアルタイムで

このツールはまだ安定化中のベータ版です。結果に違和感があればお知らせください。

ボールを壁に投げれば必ず跳ね返ります。しかし電子のような小さな粒子は波なので、エネルギーが壁より低くても一部が壁の向こうへ染み出します。これが量子トンネル効果です。

🏁 目標 エネルギーを壁の高さより低く保ったまま、透過確率を45–55%に — 量子コイントスを作りましょう。

量子実験室を準備中…

キャンバスを押すとその位置から発射 · 白いハンドルをドラッグすると障壁の高さ・幅・位置が変わります

図の読み方
  • 光る曲線の高さ = その位置で粒子が見つかる確率 |ψ|²。色 = 波の位相(虹色に回っていれば前に進んでいる)。
  • 灰色の地形 = ポテンシャル V(x)。点線 = 粒子のエネルギー E、薄い帯 = 波束のエネルギーの幅。
  • 赤い斜線 = エネルギー不足で古典粒子は決して入れない領域。波はその中で指数関数的に減衰しながら染み込みます。
  • 両端の箱 = 検出器。届いた確率がたまり、測定するとどちらか一方だけが鳴ります。
  • 単位は ħ = m = 1 の自然単位です。形や比率は実際の現象と同じですが、数値は説明用です。

量子トンネルラボについて

このツールは1次元の時間依存シュレーディンガー方程式を、ħ = m = 1の単位系で解きます。長さ260の箱を2,600個の格子点(間隔約0.1)に分け、1ステップ(Δt = 0.04)ごとにクランク・ニコルソン法で波動関数を進めます。この単位では運動量kの粒子のエネルギーはE = k²/2、波束の速さはkです。既定のE = 2ならk = 2です。

箱の両端20の範囲には複素吸収ポテンシャルが置かれ、端に届いた波は跳ね返らずに消えます。ツールは左端で吸収された確率を「反射」、右端で吸収された確率を「透過」の検出器の値として別々に集計します。画面のRとTは、波束が障壁を通り過ぎたあと実際に左右へ抜けた確率です。

クランク・ニコルソン法を使う理由

最も単純な前進オイラー法でψを進めると、波動関数のノルムが毎ステップ少しずつ増え、やがて発散します。クランクとニコルソンが1947年に熱伝導方程式のために発表した方法をシュレーディンガー方程式に使うと、更新式は(1 + iHΔt/2)ψ(t+Δt) = (1 − iHΔt/2)ψ(t)になります。Hがエルミートならこの変換はユニタリなので、全確率が丸め誤差の範囲で正確に保存され、Δtを大きくしても発散しません。

代わりに毎ステップ連立方程式を解く必要があります。1次元ではHが三重対角行列なので、トーマス法で格子点数に比例する時間で解けます。ツールはポテンシャルが変わったときだけ行列を分解し直し、各ステップでは前進・後退の掃き出しを1回ずつ行います。1967年にゴールドバーグ、シェイ、シュワルツがガウス波束が障壁で分かれる様子をコンピューター映画にして教育用に公開して以来、この種の1次元シミュレーションは量子力学の授業の定番になりました。

精度の限界も数字で確認できます。格子間隔0.1ではk = 2の波の格子上の運動エネルギーは連続値より約0.3%小さく、1ステップの位相誤差は0.05%程度です。エネルギースライダー最大のE = 5(k ≈ 3.2)でも格子誤差は1%未満です。

矩形障壁の透過確率

高さV、幅aの障壁にエネルギーE < Vの平面波が入ると、透過確率はT = 1 / [1 + V² sinh²(κa) / (4E(V − E))]、κ = √(2(V − E))です(ħ = m = 1)。障壁が厚いとsinhは指数関数のように増え、T ≈ 16E(V − E)/V² · e^(−2κa)となります。幅を2倍にするとTが半分になるのではなく、e^(−2κa)がもう一度掛かる。これがトンネル効果の核心です。

E > VでもTは1になりません。sinhがsinに変わってT = 1 / [1 + V² sin²(qa) / (4E(E − V))]、q = √(2(E − V))となり、障壁を越えられるはずの粒子の一部が反射します。古典力学にはない現象で、「段差」シナリオの目標はまさにこの反射です。

画面の理論曲線はこの平面波の式をそのまま使ってはいません。幅σの波束は運動量がおよそσk = 1/(2σ)だけ広がっているので、転送行列で計算したT(k)をその運動量分布で平均しています。σを狭めるとエネルギー幅が広がり、共鳴ピークのような鋭い構造がなまります。

シナリオの背後にある物理

アルファ崩壊のシナリオは、1928年にガモフ(ほぼ同時期に独立してガーニーとコンドン)が説明した問題です。アルファ粒子は核のクーロン障壁より低いエネルギーでも外へ漏れ出し、エネルギーがわずかに違うだけで障壁の厚さが大きく変わるため、半減期は何十桁にもわたって変わります。ツールではEスライダーを少し動かすと対数目盛りのTが大きく振れることで確認できます。

STMのシナリオは、1982年にビーニッヒとローラーが作った走査型トンネル顕微鏡の原理です。仕事関数4eV程度の金属間の真空のすき間では電子のκは約1.0 Å⁻¹で、すき間が1Å広がると透過確率はe^(−2) ≈ 0.13倍、ほぼ1桁下がります。原子1個分の段差が電流にはっきり現れる理由です。共鳴トンネルダイオードのシナリオは、1974年にチャン、江崎玲於奈、ツーが観測した二重障壁の共鳴で、障壁間の井戸の準束縛準位と粒子のエネルギーが一致すると、個々の障壁の透過が小さくても全体のTが1に近づきます。

例

基本シナリオの透過確率を手で計算する

入力
E = 2、V = 2.4、幅a = 1.6(ħ = m = 1)
結果
κ = √0.8 ≈ 0.894、κa ≈ 1.431、sinh(κa) ≈ 1.972 → T = 1 / (1 + 5.76 × 3.889 / 3.2) ≈ 0.125

幅を2倍の3.2にするとT ≈ 0.0073で約17分の1、半分の0.8にするとT ≈ 0.48です。基本シナリオの目標(E < VでT 45〜55%)は幅を0.8付近まで狭めれば達成できます。画面の値は波束の運動量の広がりのため、この平面波の値と少し異なります。

越えられるはずの障壁で反射する

入力
E = 3、V = 2.4、a = 1.6
結果
q = √1.2 ≈ 1.095、sin(qa) ≈ 0.983 → T = 1 / (1 + 5.76 × 0.966 / 7.2) ≈ 0.56

古典的なボールなら必ず越えますが、波は44%が戻ってきます。qaがπの整数倍になるエネルギーではsinが0になり、T = 1の透過共鳴が起こります。

使い方

  1. 基本の障壁、アルファ崩壊、STM、フラッシュメモリ、共鳴トンネルダイオード、段差、自由実験から選ぶ。
  2. 粒子のエネルギー、障壁の高さ・幅、波束の幅をスライダーやグラフ上のハンドルで調整する。
  3. 波束を発射し、反射・透過の検出器の確率を理論曲線と比べる。
  4. 測定ボタンで同じ実験を何度も繰り返し、粒子が毎回どちらか一方の検出器だけで捕まる統計を見る。

よくある質問

障壁の中の粒子は運動エネルギーが負なの?

障壁の中で波動関数は振動せず指数関数的に減衰します。ただし位置を測って粒子を障壁内に見つけると、その測定が運動量を大きく乱し、エネルギーはもうEに定まっていません。負の運動エネルギーをもつ粒子を観測することはありません。

なぜ透過が0か1ではなく割合で出る?

波動関数は確率振幅です。1回撃つと粒子はどちらか一方の検出器でしか捕まらず、何度も繰り返すと右で捕まる割合がTに近づきます。ツールの測定統計がこれを示します。

ħ = m = 1だと実際の大きさはどれくらい?

長さとエネルギーは任意単位です。電子に対応させるなら長さの単位を決め、エネルギーの単位をħ²/(m·長さ²)にします。長さの単位を1Åとすると、エネルギーの単位は約7.6eVです。

両端の吸収領域が結果に影響しない?

吸収ポテンシャルは深さに応じて滑らかに強くなる(W ∝ s²)ようにして跳ね返りを抑えています。ツールはT・Rの変化が止まった時点で結果を確定しますが、そのとき障壁を抜けた波はまだ右の吸収領域に届いていません。E = 0.2で段差・障壁のいくつかの条件を回すと、確定したR・Tは解析解と0.2ポイント以内で一致しました。ただし段差のすぐ上のように透過波がとても遅い(波数0.45以下)と、右の吸収領域がその一部を送り返すため、判定後も回し続けるとRが数ポイント(例: E = 0.25、段差0.2で約3.7ポイント)増えます。判定と繰り返し測定は確定した値を使うので、この分は入りません。

出典

基準日:

プライバシーとデータの扱い